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群馬用水土地改良区長期計画(群用令和ビジョン)の概要

Ⅰ 計画の位置づけ

群馬用水土地改良区は「夢の用水」「世紀の大事業」とまで形容された群馬用水を管理・運営するために昭和38年に設立されて以来、米の生産調整開始や農家負担の増大、水を利用した畑作営農の普及などの多くの困難に直面しながら、先人のたゆまぬ努力により、これらの課題を解決し全国有数の土地改良区として成長してきました。
しかし、通水開始から約半世紀が経過し、施設の老朽化による維持管理費の増大や市町村合併に伴う管理組織の弱体化、転用面積の増加に伴う賦課金の減少、営農状況の変化による水利用の多様化など新たに課題も顕在化しつつあります。また、社会情勢の変化により農村の持つ多面的機能の維持や土地利用調整などを担う団体としても期待されるようになってきています。
このような状況を踏まえて、令和新時代においても健全に運営される群馬用水土地改良区のあるべき姿をイメージし、今後10年間の財政運営、維持管理、社会貢献などに関する土地改良区運営のよりどころとする「群馬用水土地改良区長期計画(群用令和ビジョン)」を策定します。

Ⅱ 計画期間

  • 令和3年度~令和12年度

Ⅲ 群馬用水の現状

(1)本地区の農業情勢、受益面積及び組合員数
本地区は、群馬用水事業により灌漑施設が整備され、安定的な水利条件の下で米麦及び露地や施設野菜を中心とした営農形態となり首都圏に近い有効な立地を生かした多彩で多様な農業が展開されています。
平成30年度の賦課面積は5,598haであり、農地転用等による地区除外は毎年平均約23haあります、組合員数は概ね13,000人で推移しています。
(2)財政関係
過去10年の収入は8億3千万円から9億7千万円、支出は8億1千万円から9億円で推移しています。実質の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、平成23年度以降マイナスとなり、平均値もマイナスとなっています。
基本財産(退職金基金を除く)と公庫借入金の差額は平成21年度が約4億8千万円で平成30年度には約2億円となり、厳しい財政状況となっています。
(3)事務運営
土地改良区役職員は、土地改良区が担う社会的責任と公共的使命を常に意識し、健全かつ適切な組織運営に努め、公正・公平・誠実に取り組むことが求められています。
賦課金徴収率は、平成29年度まで毎年増加しましたが、平成30年度は減少しました。かんぱい事業費賦課金は、公的負担等について課題があります。
職員数は23名から25名で推移しており、令和元年度には新たに企画担当を配置しました。
(4)施設管理
管理の主体は、土地改良区が支線水路、各管理区が末端水路と区分されています。調整池の除塵作業や配水調整、減圧施設の機器管理などの日常管理業務に加え、事故対応や苦情処理に大幅な労力が割かれています。修繕費については、ほ場整備地区における修理費が修繕費全体の約65% を占めています。
従来、管理区は旧市町村単位で市町村役場に担当係が設置されていましたが、市町村合併に伴い事務局数が14から7に減少し、その業務を土地改良区職員が担うこととなり負担が増加しています。
(5)施設整備
支線水路(付帯施設含む)は、大規模で県営事業の要件を満たすものについては、県営事業で計画的に施設整備を進めています。また、緊急性の高いもの小規模なものについては、土地改良区が事業主体となり施設整備を行っています。
漏水事故が懸念される石綿管やコンクリート管が造成当初9割弱を占めていましたが、持続的に改修が進み現在は2割弱に減少しています。
末端水路(附帯施設含む)は、支線水路から各ほ場へ配水するための延長約1,000㎞のパイプラインです。漏水修理を中心に対応してきたため改修はほとんど進んでいません。修理情報の蓄積や整理がされておらず、管理図は古く現地状況とは整合しないため、令和元年度から管路情報システムの整備を開始しました。
水資源機構が維持管理をしている幹線水路は緊急改築事業により、一部区間の改修(耐震化、二連化)が行われました。しかし、水路内の土砂やゴミ等の堆積物により安定的な通水状況が阻害されるだけでなく、調整池やパイプライン等へ流入することにより機器の作動不良を引き起こす原因となっています。
(6)営農支援
昭和47年から担当職員を配置し、群馬用水営農推進協議会、群馬用水運営対策協議会、群馬用水地域利水改善グループ連絡協議会の3つの組織を軸に、組合員の営農改善や所得向上を図るため県や農協など関係機関と連携し技術支援、共励会、優良農家表彰などの活動を行っています。
(7)社会への貢献
再生可能エネルギーへの取り組みとして、令和元年度より事務所屋上に太陽光発電施設を設置して売電を開始しました。加えて、平成30年度より小水力発電導入可能性調査を開始、詳細について現在調査・検討中です。
また、地域の産業祭に参加したり、地域の組織(消防署、消防団、自治会等)と協定を結び地域貢献を目指す活動を行っています。
そのほか、広報誌の発行、ホームページ、地域の小学生を対象としたパンフレットを作成し配布するなど、群馬用水に対する理解の醸成に努めています。

Ⅳ 群馬用水土地改良区のあるべき姿(20年~30年後の姿)

1 土地改良区の基本的な性格
群馬用水土地改良区は、日常の管理により適切な水配分、漏水事故に対する対応、計画的な管水路の補修・補強、揚水機場や調整池の保全管理を通して農地へ用水を供給するための団体としての性格を有しています。
また、畑地における水利用を指導する機関としての性格や農業情報を基礎とした土地利用調整団体、生態系の保全や地下水の涵養等地域用水機能や消防用水機能など多面的機能を発揮させる団体としての性格を有しています。

2 群馬用水のあるべき姿
群馬用水土地改良区では、議決機関としての総代会、執行機関としての理事会、監査機関としての監事会及び事務局がコンプライアンス(倫理・法令遵守)のもと、それぞれの役割を十分に発揮し、多様な意見を取り入れ役職員一丸となって土地改良区運営が行われています。
(1)財政
新たな財政計画のもとで収入の柱である賦課金に新たな徴収方法を導入し、公平性を保ちつつ徴収率が向上するとともに、国、県、市町村等の支援は引き続き行われています。
支出についても維持管理の合理化や事業の計画的実施により収支全体の健全性が保たれています。
また、施設更新や災害に備えた基本財産積立金が確実かつ効率的に運用されています。
(2)維持管理
ICT(情報通信技術)を活用し管路やポンプ、調整池などの状態把握と操作を行い、管理区や協力業者と一体となって適切に維持管理されています。
また、災害に備えてBCP(事業継続計画)に基づき災害対応訓練が継続的に実施されています。
末端施設にあっては管理区が支援制度を新たに導入し、健全に管理されているとともに事故率等を勘案して計画的に更新が行われています。
一方、土地利用調整が進んだ地域では、農作業の効率化と施設の更新を図るため再区画整理事業を行う地区が出始めています。
このような維持管理のもと、安全で安定的に農業用水が供給され適切な営農技術や資材購入の支援、農産物のイメージアップ等により農業生産性や農家所得の増加が図られています。
(3)社会貢献
社会からの負託を受け、農地・農業用水の持つ多面的機能が適切に発揮されるよう各種取り組みが行われ、農村の景観や生態系、防災機能などが保全されているとともに、広報活動が積極的に行われることにより県民に群馬用水の重要性が理解されています。

Ⅴ 施策

1 安定した財政基盤の確立

(1)財政計画
①収入
・財政予測を踏まえつつ、各種賦課金額の適正化や滞納処分の実施、行政支援の要請など賦課金の抜本的な見直しを行います。
・多面的機能支払交付金事業事務や再生可能エネルギー等の導入による収入増加を図ります。
②支出
・施設の維持管理にあたっては、高補助率事業や多面的機能支払交付金事業の導入、計画的効率的事業実施により支出を抑えます。
・事務経費については、削減目標を定め節減努力を行います。
③基本財産
・複式簿記が導入され施設の資産評価が行われることを契機として、老朽施設改修のための事業積立金や災害に備えるための備荒積立金の創設を検討し、基金の抜本的な見直しを行います。
(2)事務
①コンプライアンスの推進
・「役職員の倫理指針」を定めるとともに、コンプライアンス意識向上のための研修等を実施するなどコンプライアンスが徹底した組織を目指します。
②組織・人員配置
・新たな事業導入に合わせた組織改正や人員配置を行います。また女性役職員の参画・採用を促進します。
③人材育成
・職場内研修や外部研修を積極的に活用するとともに、能力や業績に関する評価制度を導入し人材育成を図ります。
④事務の合理化
・簿記システムやテレワークシステムの導入、文書のデータベース化等を行い、事務の合理化を図ります。

2 適切な維持管理と営農支援

(1)施設管理
①管理区組織の強化
・多面的機能支払交付金を導入し、各地域の協働作業の取り組みを促進させることにより集落管理体制(班)の強化を図ります。加えて数管理区を担当する事務職員を雇用し管理区事務を担います。
・調整池等管理費や末端施設修理費などを現状の受益面積や修理実績などによる見直しを行います。
②民間企業との連携
・現在締結している管理協定を見直し、緊急時対応体制を強化します。
・民間企業に委託している加圧ポンプ等の年間保守点検や遠隔監視業務委託について、管理委託までの拡充について検討します。
③ICT化の推進
・調整池、揚水機場や支線水路などに遠隔監視、制御システムや流量観測システムを導入し、安定的な農業用水供給体制を確立します。
・現在構築中の地図情報管理システムの確実な推進を図ります。
④災害への備え
・地震や台風、感染症の蔓延など様々な危険的な発生事象(インシデント)に直面しても業務の継続や早期の復旧を図るための事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定するとともに防災訓練を定期的に実施し災害等へ備えます。
⑤水利用の変化への対応
・水利用や営農実態調査を実施するとともに、夏水期間の変更(水利権の前倒し、後出し)や営農雑用水の法定化を進めるため水利権者である水資源機構と協議、調整を進めます。
(2)施設整備
①末端施設の整備
・末端パイプラインや加圧ポンプ機場等の末端施設は、県、市町村との調整を図り適切な補助事業を利用し石綿管や事故率等を勘案して布設替や改修等の整備開始を検討します。
②支線水路、ポンプ等の整備
・県営支線水路や揚水ポンプ機場は、これまでと同様、県営事業により計画的な整備を行います。
③再区画整理の推進
・農地中間管理事業と連携して土地利用調整を図り、組合員や管理区の要望を踏まえつつ再区画整理事業を推進します。
④幹線水路整備の支援
・水資源機構が行う幹線水路や揚水ポンプ機場の長寿命化を図る群馬用水二期事業の事業化に向け各種調整を行います。なお、事業費の地元負担については土地改良区の財政状況を考慮し市町村と財政支援について協議します。
・安定的かつ確実な用水管理を実現するため幹線水路巡視業務を受託します。
(3)営農支援
①地域振興作物の推進、営農技術支援
・営農に係わる3組織を軸に、県、JA、市町村、地域の利水グループ等と連携し、組織支援を通じて用水利用による地域振興作物の産地育成や組合員の所得向上に結びつけます。
②群馬用水利用作物のイメージアップ
・清冽で安定的に供給される群馬用水で育成された作物を各地域のブランドと連携して「群馬用水ブランド」を付加し、イメージアップを図ります。
③土地利用調整の推進
・農地集積のための土地利用調整や広報活動を推進するため農地中間管理事業の受託団体となり積極的に活動することにより地域農業の振興を図ります。

3 社会への貢献

(1)再生可能エネルギーの推進
①小水力発電
・これまで実施した発電可能性調査の結果や新規発電適地調査により、発電適地を決定し補助事業による施設整備を行い発電の開始を目指します。
②太陽光発電
・現在の計画を確実に実施し、安定的な収入を確保するとともに、CO2削減に貢献します。
(2)多面的機能の発揮
①多面的機能支払交付金の導入
・管理区の班単位に、多面的機能支払交付金を導入し、耕作放棄地の発生防止や農業水利施設の長寿命化を図ることにより農業・農村の持つ多面的機能の維持に貢献します。
②地域貢献
・防火用水や地域イベントへの参加、社会福祉団体との連携、学校教育の支援などを通して地域振興に貢献します。
(3)広報
①SNS(Social Networking Service)等を通じた情報発信
・ホームページを充実させるとともに、TwitterやFacebook、YouTube等を取り入れ、情報の随時発信を行い群馬用水の知名度の向上や重要性についての理解を促進します。
②21世紀土地改良区創造運動の積極的展開
・土地改良区が果たしてきた役割や、農地・農業用水の持つ多面的機能について、県民・国民の理解が促進されるように21世紀土地改良区創造運動を積極的に展開します。
(4)各種交流
①全国土地改良区との連携強化
・全国大規模農業水利事業協議会の前身となる全国大規模土地改良事業協議会を発足させた土地改良区としての自覚を持ち、全国各地の土地改良区と連携し事業の推進や施策の提案を国、県、市町村、水資源機構に行うとともに各種の情報や問題意識の共有を図り、土地改良区を発展させます。
②世界へ目を向けた活動
・JICA(独立行政法人国際協力機構)の活動に研修受け入れなどの協力するとともに、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成に向けて貢献します。

 

財政中長期計画の概要

「群馬用水土地改良区長期計画(群用令和ビジョン)」で策定した各種施策に取り組み、過去の運営方法を継続した場合に予想される厳しい財政運営から脱却し、将来にわたり持続可能で自立性の高い健全な財政運営基盤の確立を目指します。

 

長期計画のダウンロード

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